SCENE.1 奥村ひかる「カビリアの夜」

― 「信じる」と言う行為の対象は、自分自身でないといけない ―

そう教えてくれた映画は、私の好きな映画監督の一人である、フェデリコ・フェリーニの『カビリアの夜』です。

まだ貧しいイタリア・ローマで、夜の仕事をする天真爛漫な女性カビリアの物語です。物語の始めから、男に金を奪われ、川に突き落とされ…と簡単に男を信じては裏切られてばかり。けれど懲りずに自分を愛してくれる人を求め続けます。そんな彼女を見ていると、女友達のワンダと共に、

「人を簡単に信じすぎてはいけない」

と忠告したくなりますが、カビリアにそれは響きそうにありません。結局、最後まで幸せにはたどり着かず、さすがに彼女ももうだめか…と諦める観客を見ごとに裏切り、ラストシーンで再び生きる希望を見出し歩き出す彼女の強さに“はっ”とさせられます。

彼女は決して人を信じていたわけではなく、幸せを求め続ける自分自身を信じていたのだと最後に気づかされました。そのラストシーンは、モノクロ映画とは思えない、幻想的で美しい輝きに溢れ、いまも目に焼き付いて離れません。

巷にあふれている「過剰な復讐劇、愛憎劇」で、日常のフラストレーションを昇華させる映画ではなく、人間が本来持っている素朴な強さを描く『カビリアの夜』は自分の心の片隅にしまっている映画の一つです。

そして、カビリアが身にまとう洋服を見るのも好きでした。ノースリーブのIラインのボーダーワンピースや、夜の街に出かける際には、ボレロ丈のファージャケットの中に開襟のボーダーブラウス。結った髪を出す穴の開いた冒険帽、セーラー襟のブラウスなど…。小柄な彼女の着こなしは、大人の女性に振り切れない幼さがあり、彼女の愛らしさがよく表れていると思います。

Iラインのエレガントなスカートにボーダーを合わせて、大ぶりのネックレスをひとつ…

明日のコーディネートのテーマはきっとカビリアです。

彼女の底抜けの明るさが、自分に宿るように…。