静岡市の一輪車競技者のレベルは全国トップなのをご存知でしょうか。その中でも常に先頭に立っているのが、1997年に発足し、現在の部員は総勢50名を数える静岡市城内一輪車クラブです。一輪車の大会には演技と競技の両部門があるということですが、どちらでも幾度となく全国チャンピオンを輩出し、クラブは静岡県大会で20連覇中という全国屈指の競合クラブなのです。
一輪車パフォーマーの山本夏夢さんはこのクラブに幼い頃から所属し、2014年にカナダで行われた大会に高校二年生で出場してペア競技の世界チャンピオンになりました。現在は表現者として舞台に立ちながら、指導者として次世代の育成にも力を入れています。同時に一輪車の普及や認知度の向上、待遇の改善など一輪車の未来を見据えた活動にも意識的に取り組んでいます。
そのような意識が芽生えたのも、これまで多くの海外公演に出演してきたからなのでしょう。というのも世界チャンピオンになったことで、世界的に有名なサーカスカンパニー「シルク・ド・ソレイユ」からオファーを受け、その翌年18歳のときに一輪車パフォーマーとして初出演。公演のたびに充実した創作環境を目の当たりにしたこと、海外の共演者たちがパフォーマーとしてしっかりと生計を立てていること、サーカスが文化として社会に根付いていることなどを身体で感じられたことは、彼女の感性に大きな影響を与えたはずです。
日本では一輪車に限りませんが、パフォーマーとして生計を立てるのは難しく、安定した生活基盤にはなりえません。多くのパフォーマーは副業のような形で活動を続けています。なぜ日本と世界はこれほどに違うのか。すぐに答えの見つかる問いではないものの、同じような悩みを持つ一輪車パフォーマーたちと共に新しい挑戦としてプロチーム「UniCircle Flow」の活動を始めました。チームはアメリカのオーディション番組で注目されたこともあり、海外公演のオファーが増えプロとしての道を確実の歩んでいます。
引用:リンクエスト㈱
しかし、山本さんは先を見据えたときに専業プロパフォーマーではなく、一般企業に就職して複業として続けることを大学卒業時に選択しました。社会人としての経験が一輪車を社会に広めていくために必要だと判断したからです。トップパフォーマーと社会人の二刀流。もちろんこれは簡単な試みではありません。常に高度な技と創造性を磨くためには、日々の練習とケアが大切です。ただそれを言い訳に仕事の手を抜けるわけではありません。むしろ会社の理解を得るには人一倍頑張らないといけないでしょう。
トップパフォーマーとして納得のいく数年を過ごしたら、その後は後進の指導と一輪車の発展に尽力したいといいます。持ち前のチャレンジ精神できっと新たな一輪車の魅力をつくりあげていくでしょう。ただ、それはもう少し先のこと。今はまだ本人のプロフェッショナルな演技を観ることができます。3月9日、10日に開催されるアワーフェスティバルはその機会でしょう。ぜひ一輪車の魅力と可能性を目撃してください。