天候に恵まれた今年のゴールデンウィーク。新緑が美しい駿府城公園では、演劇やダンスといったパフォーミングアーツ(芸術的身体表現)のフェスティバルが行われました。公園内の紅葉山庭園前広場には約五百席を備えた特設野外会場もお目見えし、SPAC-静岡県舞台芸術センターの演劇を4日間上演。連日チケットが売り切れるほどの盛況だったよう。園内ではフェスティバル関連イベントとして交流スペースも設けられてキッチンカーもたくさん集まり、来場者のお腹を満たしていました。
その賑やかな雰囲気の中で、ちょっと変わった自転車が走っていることに気づきました。座席を九つ備えたこの自転車はパーティーバイクと呼ばれ、ドリンクホルダー付きのカウンターが設置されています。みんなでワイワイとドリンク片手におしゃべりしながら走ることができることから名付けられたと聞きました。運転手1名と漕ぎ手6名、後部座席に2名乗車することができます。関連イベントの一環として行われ、静岡市初登場ということ。
パーティーバイクにはカウンターの間にガイド役が立てるスペースがあります。バスガイドのようなアナウンスに留まらない重要な役割をもっています。それはたまたま乗り合わせた人たちをつなぐこと。見知らぬ人同士が息を合わせて自転車を前進させるためには、一体感を生み出すことが必要です。ペダルを漕ぐだけではこの自転車の魅力は伝わらないようで、お互いに声を掛け合い目的地に向かって進むことが大切だといいます。コミュニケーションがうまくいけば到着したときの盛り上がりは、すでに昔からの知人であるかのような雰囲気になるそうです。
そのガイド役を務めていたのが大学生のボランティアスタッフです。ひとりはこの春に愛媛県から来た静岡大学一年生。彼女たちは社会活動に興味があり、このイベントを紹介されて参加しました。慣れないながらも積極的にコミュニケーションを試みて、走行中に出身地や来場した理由を聞いたりと、リラックスして楽しめるように試行錯誤を続けたといいます。まるでファリシテーションの実践のような場で、教室では経験できない学びがあるのでとても楽しいと頼もしい言葉が返ってきました。
さきの静大一年生は感想を伝えてくれました。
「実際に参加して、何かを媒体に人とコミュニケーションをとることの力の大きさを感じました。今回のイベントであればパーティーバイクや演劇や楽器演奏などが人と人を繋げる媒体となり、ただ面と向かって話をするだけでは伝えきれなかった心の内や感情を表現できることを体感し、凄く濃くて深く記憶に残る経験となりました。」
彼女は静岡をほとんど知らないはずですが、このイベントに参加したことでこの地域がぐっと身近になったようです。本格的に始まる静岡生活がこのような体験を経て、彩り豊かになることを願わずにはいられません。そして、このような経験のできる機会に富む「まち」であることが大切だと改めて感じました。